母が格闘したソファが粗大ゴミ置き場に。

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朝早く目覚め、夕べの母の姿を思い描いたら、
知らぬ間に涙が流れました。

89歳の、小さくなった身体の母が、
すっぽりと身を包むほど頑丈で大きな
ひとり掛けソファーを
引っ張ったり、押したりしながら玄関扉から出し、
長い廊下を運び、荷物用エレベーターに乗せる。

エレベーターが階下に降りたら
はーはーという息を吐きながら、
またそれを引きずり出し、廊下を運ぶ。

大人ふたりでも、やっとな椅子と、
押したり引いたりの孤独な格闘を続ける。



痩せた母の姿がまるで、ショート映画の一シーンのように
くっきりと私の目に浮かびました。

人気のない夜のマンションの3階の廊下から階下へと、
理由も分からぬ行動をとる老婆の姿。



体重も、体積も母と同じほどの
独りがけソファー。

そのソファーは、父のための物でした。

私が生まれた古い一軒家からここに引っ越す時に、
3人掛けのソファーとセットで運び込んだ物です。
ベージュグレーの革張りのレトロなソファー。

元気なころの父がフカッと座って、
テレビを見ながらうつらうつらしていた姿を思い出します。

昨夜私が、このソファーもういらないでしょ。
この椅子は階段の昇降を邪魔するから、捨てた方がいい。
この家にある物をどんどん捨てて、
父が歩きやすいスペースを作るべきだ。
と大声で母を怒った自分が愚かに思えます。

母には大切な思い出の椅子だったかもしれないのに。

母は、父の思い出を、自分のありったけの体力を使って、
私の気もちを思って捨ててくれたのです。



母は物を捨てるのが難しい時代に生きて来た人です。
もしかしたら母はそんな自分の世代との決別の戦いに
ひとりで挑んだのかもしれません。
病の身体を押して。

そうだ、ソファーが粗大ゴミの車に乗ってしまわないうちに、
写真を撮っておこう! 

ll.jpg

kk.jpg
マンションの粗大ゴミ置き場に残されていたソファ


いつか私が母を疎ましく思う時があっても、
この写真を見ればきっと母に優しくできる。

今日、母の水戸黄門の印籠のような物がひとつ生まれました。




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